もうひとりのサリンジャー「ブライト・ライツ、ビッグ・シティ」を読んで

「ブライト・ライツ、ビッグ・シティ」
ジェイ・マキナニー(高橋源一郎訳)

ニューヨークの雑誌社の調査課に勤める「君」は、日々のすべてに飽き飽きしている。夜な夜な遊び仲間と街へ繰り出して、ダンスに酒にドラッグでどんちゃん騒ぎの毎日。「記事の事実確認をして、間違いがあれば直す」という単調な仕事を好きになれず、上司には冷たく当たられてばかり。遊び相手の女たちには、いかに雑誌社で重要な仕事をしているのかを匂わせたりするが、本当は会社ではダメ社員なのだ。

「君」は常に動かしがたい事実に追い詰められている。仕事にも、妻にも、家族にも。「君」の周りにいる他の人物をみれば、「君」が追い詰められてしまうのは真面目すぎるからだと気が付く。だが「君」は嫉妬や堕落や絶望からは逃れられないし、正直、本当に逃れようとしているのか分からない。

もしもこの本を30ページくらい読んで「ただの駄目な奴じゃないか」としか思えなかったら、読まなくて大丈夫だ。でも、もしも少しでも「君」の自暴自棄さに惹かれるなら、続きを読んでほしい。どうして「君」は大都市の喧騒で自分を毒し続けるのか、徐々に明かされていくからだ。「そんな理由で堕落していいわけがない」とか、そんな正論には耳を貸さなくてよい。

少なからず若者は、自分を追いつめるものから逃げたくて、大都市のきらびやかな光を追いかけるところがあると思う。そこで成り上がる者、開き直る者、やはり苦しみ続ける者、さまざまだ。あなた自身はどうだろうか? この小説は直接、読者に問いかけてくる。

memo
「80年代のサリンジャー」と呼ばれたマキナニーのデビュー作。若者の支持を受けて、ベストセラーになった。サリンジャーを愛読する人ならきっと好きになるだろう。


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