「ヒストリア」(池上永一)を読んで

「ヒストリア」(池上永一)角川書店
山田風太郎賞受賞作

沖縄戦で死地を彷徨い、戦後の闇市で成り上がり、追われる身となって南米ボリビアへ渡る。気性の激しい美貌の女が戦争と革命の時代を生き抜き、家族、友人、そしてボリビアとの絆を築くまでの大長編だが、飽きさせず一気に読ませてくれる。ただ所々ハチャメチャな設定や出来事が続くのでついていけない人もいるかもしれないが、主人公・知花煉をはじめ魅力的なキャラクターが多数登場するので、彼らに身を任せて読んでほしい。太平洋戦争から戦後の革命の嵐、冷戦、キューバ革命と、彼らの行くところ行くところ、常に戦いと事件が起きる。国家謀略に巻き込まれたかと思えば、ボリビアの大地に根付く文化や農業に寄り添う姿も見せる。単行本で600ページを超えるボリュームなだけあって様々な要素をこれでもかと詰め込んでいるが、ダレることなく楽しませてくれる。

そもそも私は戦後に沖縄の人々が南米へ移民していた事実を知らなかった。本の帯文を読んだときは、戦後の沖縄とボリビアをどうやって結びつけることができるのだろう?と思っていた。「テンペスト」などを書いてきた作者なだけあって、沖縄の歴史、文化への強い関心が感じられる。また、南米のボリビアという国についても私は知っていることはほとんど無かった。この国のみならずラテンアメリカ全体の風土に対する深い理解と描写がこの小説をただの冒険譚で終わらせることなく、「個人と国家」「コスモポリタン」「移民」などの広いテーマへ導いている。

この小説の主要なテーマの一つに沖縄の基地問題がある。「基地問題」というと矮小化してしまうことになりそうだが、この小説の最後のページを読むと、今も残る沖縄の矛盾を突き付けられる。彼女の長い旅路にこのラストが用意されていたことに、胸が締め付けられた。

 

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