「異常探偵 宇宙船」を読んだ感想

「異常探偵 宇宙船」前田司郎

人の死角に入り込み、音もなく現れては消える怪人・空気ゴキブリ、小児性愛者であることを隠しながらどうにか慎ましく生きる「お嬢さん」、少年の心を持った知力ゼロの三十路の美青年、人には聞こえない声を聞く探偵・宇宙船。出てくる人物はみな「普通」から逸脱した人たちだ。だが不思議なことに、表紙イラストの雰囲気を裏切らない、ほんわか感も常に漂っている。

大人になればなるほど、「この場面ではこう振る舞うのが普通」ということが分かってくる。その「普通」は人によって少しずつ違っているのだが、かれらの場合は大きく違っている。だが違っている時点で、彼らも私も同じなのだと気づかされる。「普通なんてクソくらえ」といった気負いはなく、自然とそのことを教えてくれる一冊だ。

事件は「お嬢さん」の同好の士が自殺したことから始まる。「お嬢さん」はそれを自殺だとは信じられず、頼った人物が探偵・宇宙船だった。さように殺人が起きるからには探偵が登場するが、この本はまったく王道を逸脱している。まず証拠を集めて犯人に迫ることは一切ない。そもそも宇宙船は人には聞こえない声を頼りに捜査を進める。知力ゼロに美青年に至っては、なんの役にも立たないのだ。「普通」からずれた彼らがずれたまま走り出すと、この事件が解決へ動き出す。読者の視点から軽妙な解説者のごとく語る地の文が非常に効いているのも、本書のお薦めポイントだ。


読書日記ランキング

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください