校閲者が登場する小説をリストアップ

世の中にお仕事小説は数あれど、なかなか校閲をテーマにしたものは見つかりません。小説の中に校閲者が登場するものってどんな小説があるでしょうか。探してみました。

(ここでは校正と校閲を厳密に区別しません。ちらっとしか出てこない本も含まれています)

「こんな小説もあるよ!」という方、いらっしゃいましたらぜひ教えてください!
@Shima_aya22 でも、ブログのコメントでもお待ちしています。

すべて真夜中の恋人たち

川上未映子

誰かと自然に言葉を交わすこともできないくらい自信のない冬子。居心地の悪くなった会社を辞めて、フリーの校閲者となり、部屋の中でひとりゲラと向き合う日々。何かを主張したり、自分の考えを持つこともない。そんな冬子に対して周りの人間は「あなたを見ているとイライラするのよ」「毎日何が楽しいの?」「あなたは私の人生の登場人物じゃないのよね」といった心無い言葉を投げかけてくる。そんな生活の中で、三束さんという男性に出会い、冬子の単調な日々に変化が表れ始める。

情けない話ですが、自分の仕事について他人に説明したときはいつも、「単調でつまんなそうな仕事だな」と思われていないか気にしてしまいます。主人公の冬子は、内向的な性格もあいまって「つまんない人間」というレッテルを貼られて苦しみます。つまらない奴だと思われている人間にしか見えない美しい世界も、きっとあるのだと思います。

「すべて真夜中の恋人たち」を読んだ感想

2018.06.24

荒地の恋

ねじめ正一

新聞社校閲部に勤める北村太郎は同人「荒地」に所属する詩人だが、極端な寡作であった。一方、同じ荒地のメンバーである田村隆一は、詩神に愛されたかのような豪放磊落な男だった。二人は十代の頃からの親友だったが、北村が田村の妻・明子と恋に落ちてから三人の地獄が始まる。北村は職場と家族を捨てて明子とのあてどない暮らしを選び、田村は妻と友を取り戻すために己を壊すほどの酒を浴びた。この三角関係を中心に、戦後の現代詩をリードした荒地派の詩人たちの、痛ましくも濃厚な人生を描く。

主人公を豊川悦司、明子を鈴木京香、田村を松重豊でドラマにもなっていました。ドロドロの不倫劇なのは確かですが、十八歳の少女・阿子の登場により「スキャンダラスなだけの小説」ではなくなっていると感じます。

詩を愛した男たちの友情と恋愛の地獄「荒地の恋」

2018.09.26

校閲ガール

宮木あや子

本書を石原さとみ主演でドラマ化したことで、校閲業界は一気に知名度を上げました。主人公・河野悦子の型破りな校閲に、私も同僚も同業者も「いや、こんなことしないって……」と口をそろえていましたが、なんだかんだ言って、みんな原作も読んでたしドラマも観てたよね(笑)

ファッション雑誌の編集者を目指して出版社に入社したものの、なぜか配属されたのは校閲部!社内にこもり、ひたすら活字を追う同僚たちを尻目に「事実確認してきます!」といって外へ飛び出していってしまう主人公。負けん気の強さと粘り強さで様々な事件を解決していきます。たいてい小説に出てくる校閲者は、単調でつまらなくて鬱屈とした雰囲気を漂わせていますが、この主人公には一切それがない、稀有な小説です。

舟を編む

三浦しをん

本邦何度目かの国語辞書ブームを巻き起こした本書。2012年の本屋大賞に選ばれ、映画、アニメ、漫画へと広がっていきました。ここで改めてあらすじを紹介する必要もないかと思います。

校閲者と切っても切り離せない辞書の話だから紹介している、という面もありますが、ちゃんと校正の場面が出てくるんです。辞書の校正、人生のうちで一度くらいやってみたいものです。でもたぶん、一度で十分だろうなとも思います(笑)

ブライト・ライツ、ビッグ・シティ

ジェイ・マキナニー

ニューヨークの雑誌社の調査課に勤める主人公は、日々のすべてに飽き飽きしている。夜な夜な遊び仲間と街へ繰り出して、ダンスに酒にドラッグでどんちゃん騒ぎの毎日。「記事の事実確認をして、間違いがあれば直す」という単調な仕事を好きになれず、上司には冷たく当たられてばかり。遊び相手の女たちには、いかに雑誌社で重要な仕事をしているのかを匂わせたりするが、本当は会社ではただのダメ社員。なぜ主人公は、こんな自暴自棄な生活から抜け出せなくなっているのか……。

主人公の仕事は校閲に近いようですが、調査課とは別に校閲課という部署もあるらしく、米国の出版社の体制がいまいち謎です。この本では校閲が面白みに欠け、主人公を苦しめるものの象徴として出てくるので、本業とする者としてはすこし心が痛みました。ですが彼のような気持に一度もなったことが無いと言えば嘘になります。校閲というジャンルを抜きにしても、大好きな小説です。

もうひとりのサリンジャー「ブライト・ライツ、ビッグ・シティ」を読んで

2018.09.16

停電の夜に

ジュンパ・ラヒリ

毎晩やってくる1時間の停電。死産を経て互いを避けるようになった若夫婦は、この時間、ロウソクに火をともして隠し事を打ち明け合うことにした。出会ったころ、付き合っていたころ、結婚してから――。気持ちが冷めてしまったのか、つらい思い出から逃げているだけなのか。二人の打ち明け話で、夫婦の関係が少しずつ変わってゆく。

静かな語り口で進む短編小説です。妻は校正の仕事、夫は学生をしています。ちなみに著者はロンドン生まれのインド系。

まだまだあるよ!
「トロッコ」芥川龍之介
「誤植文学アンソロジー」

小説以外も! 番外編
漫画「重版出来」
ドラマ「ソウルメイト」

 

2 件のコメント

  • 『トロッコ』が、校正者の回想として語られていたのを、今まで読み過ごしていました。
    面白い喩えだと思いました。
    気付かせて頂き感謝です。

    • コメントありがとうございます。
      トロッコについては、Twitterでフォロワーさんから教えてもらいました。
      遠い昔に読んだので、私もすっかり忘れていました(^^;)

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