「黙殺 報じられない無頼系独立候補たちの戦い」を読んだ感想

「黙殺 報じられない無頼系独立候補たちの戦い」
畠山理仁(集英社)

 

「泡沫候補」とは選挙で当選する確率が限りなく低く、多くの有権者やマスコミから相手にされない候補のことをさす。立候補者の届け出一覧には掲載されても、新聞記事に大きく載ることもなければ、ワイドショーで長尺で取り上げられるわけでもない。おまけに得票率が一定の比率を下回れば数百万という供託金が没収されるのだ。それでもなぜか、様々な選挙に立候補しつづける者たちが居る。そんな彼らを筆者は敬意をこめて「無頼系独立候補」と呼ぶ。この本はそんな無頼系独立候補を追ったノンフィクションだ。

「この人、いつも立候補してるのにビリだよね」「どうせ当選しないのに、よっぽどお金と時間が余ってるのかな」。うっすらとそんなことを考えたことはあっても、彼らの政策や志について知りたいと思ったことはあっただろうか。ただの酔狂や売名だと思っていないだろうか。私もこの本を読むまでは深く考えたこともなかった。だが彼らは供託金を払い、命がけで世の中に対して意見を表明しているのだ。選挙にも行かず、文句ばかり言う有権者に比べて、彼らは行動を伴っている。そのことに対し、本書のなかで常に筆者は敬意を払う。彼らの発信する奇抜なアイディアのなかに、現に実行された政策もあるのだ。

マスコミは主要候補しか大きく取り上げない。そのことに対して筆者は厳しく批判する。マスコミによって主要な立候補者が選別されている今の状況は、民主主義の根幹である選挙の正しい姿とは言えない。法的に同じ手続きを踏んだ者は、等しく扱われるべきではないのか。筆者の問題意識に深く考えさせられる。

筆者は長年、選挙の取材を続けているため、この本は我々の知らない選挙の裏側も見せてくれる。年々選挙手腕が上がる宗教系政党、ポスター貼りを助け合う独立候補たち、繁華街で踊り続けるマック赤坂、橋下徹に公開討論を呼びかけてつまみ出された独立候補。選挙のお祭り感が好き、というライトな読者もきっと楽しめるはず。だがなによりも、無頼系独立候補たちの個性的でひたむきな選挙活動だけでも十分読み応えがある一冊だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください