中学生がお金を手に入れる方法を考えた「おカネの教室」を読んで

「おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密」高井浩章

 現役の経済記者が家庭内連載として書き始めた、お金と経済をめぐる青春小説。「お金を手に入れる方法は、かせぐ、ぬすむ、もらう、かりる、ふやす。あと一つは?」この疑問を中心にして、中学生のビャッコさんとサッチョウ君が、謎の大男・カイシュウ先生から世の中のことを学んでいくストーリーです。役に立つ職業とは何なのか考えたり(高利貸しからバイシュンフまで!)、中学生が借金をするための方策を考えたり……。「こんなこと、実際のクラブでは無理だよな」という出来事ばかり出てきますが、その分、教科書には載っていないお金と経済の本質を分かりやすく教えてくれます。

 子供向けに経済について解説する本というと、用語の解説を小説仕立てにしただけでしょ、と思っていました。「お金とは日本銀行が発行する……」「複利の計算法は……」といったような。ですがこの本は違いました。「役に立つとはどういうことか」「リーマンショックで儲けた奴らの責任とは」「格差が無くならないピケティの不等式」など、大人でもいまいちはっきりしない問題を取り上げています。さらに、登場人物のたちと一緒にいろいろな職業を「かせぐ」「もらう」「ぬすむ」に分類していくと、おのずと経済と労働について考えを深められるようになっています。

 よい意味で本書が教育的でないのは、「この世の中には、玄人の世界がある」という話題を出しているところです。先ほど書いた通り、この本には様々な職業を取り上げて分類していくシーンがあります。そこでは世界最古の職業「バイシュンフ」や、グレーだけど無くなることのない「ギャンブル」などが登場します。カイシュウ先生は「良くないから無くすべき」などという身も蓋もない結論は出さず、「玄人と素人」「必要悪」などのキーワードを使って解説してくれます。

 さらに現役の経済記者らしいな、と感じるのは後半に投資信託の会社(もちろん架空)が出てくるところです。リーマンショックの印象が強すぎて、金融について最悪のイメージを持っている人も多いはず。本書でもカイシュウ先生がリーマンショックの起きた原因を解説した部分を読んだら、そういう印象を持つと思います。ですが最後にまっとうな志を持った投資会社の人に、投資信託のしくみとその使命を説明してもらうシーンが出てきます。教育者が中学生に経済を教えるために書いた本だったら、「投資信託という可能性もある」なんて要素を盛り込んだりはしない気がするので、このポイントが経済記者っぽさを感じさせます。

この一冊を通して、金融の良い面と悪い面を教えてもらえる構成になっていて良かったです。中高生のお子さんがいる方におすすめしたいのはもちろん、大人でも「もっと若いときに読んでおきたかった」と思うこと間違いないと思います。


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