「銀河英雄伝説1黎明篇」の名言集(下)

現在、新しいアニメも放映中の田中芳樹原作「銀河英雄伝説」。7年ぶりに読み返しましたが、初めて読んだ時のように楽しめました。
「銀河英雄伝説1黎明篇」の名言集(上)に引き続き、後半部分の名言を紹介していきます。

「私は自分の人生の終幕を老衰死ということに決めているのです。一五〇年ほど生きて、よぼよぼになり、孫や曾孫どもが、やっかいばらいできると嬉し泣きするのを聴きながら、くたばるつもりでして……壮烈な戦死など趣味ではありませんでね」(243p)

シェーンコップがヤンに言ったセリフだ。先のイゼルローン要塞陥落作戦のとき、ヤンはシェーンコップに要塞を陥落させることで当面の平和を確保し、自分は退官するつもりだと話した。この発言をきっかけに、裏切りの可能性を囁かれていたシェーンコップはヤンを信じてこの無謀な作戦に乗った。彼がヤンの説得に応じた理由がここで明かされる。彼もヤンと同じく、武人として華々しく散るような死に方を求めるタイプの人間ではなかったのだ。

あの不愉快な憂国騎士団がピエロであることは認めるが、誇張され戯画化されたその行動が、巧みに計算された演出の結果でないことは断言できないだろう。かのルドルフ・フォン・ゴールデンバウムを早くから熱狂的に支持した若い世代は、銀河連邦の有識者たちから苦笑と憫笑をもって迎えられたのではなかったか。(247p)

「憂国騎士団などただのピエロ」と一顧だにしないグリーンヒル大将の発言を受けての、ヤンの内心である。なぜただのピエロと思われる連中が、あんなにも支持され積極的な活動を展開できているのか。大将はそのことに全く鈍感である。これは我々の社会に今まさしく起きている出来事としか思えなかったのは、私だけではないだろう。

「高度の柔軟性を確保しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」
(中略)
「要するに行き当たりばったりということではないのかな」(268p)

イゼルローン要塞を陥落させ、当面の平和を確保した自由惑星同盟は、ヤンの思惑を遥かに超えて、議会の選挙対策のせいで帝国への大出兵へ走り出してしまう。その作戦会議の様子は読者をひたすら苛立たせることで有名な場面だ。出兵の理由もさることながら、作戦立案をしたフォーク准将の小人ぶりに、である。日本社会の非効率かつ非論理的な部分が凝縮されており、まるで「わが社の会議のようだ…」と心を痛めた読者はきっと数多くいたことだろう。

「勝ってはならないときに勝ったがため、究極的な敗北においこまれた国家は歴史上、無数にある」(275p)

会議の終了後、シトレ元帥がヤンに発言した。今回の大出兵が万が一にも成功すれば、今度こそ同盟は究極的な敗北へ突き進む。シトレ元帥はそのことを案じているが、そもそもこの大出兵自体がイゼルローン要塞の陥落という「勝ってはならないときに勝ったがため」に生じてしまった無謀な冒険主義なのだ。「愚者は経験に学ぶが、賢者は歴史に学ぶ」などと言ったりもするが、歴史を学ぶヤンその人が、同盟を無謀へ駆り立てるきっかけを作ったのが皮肉としか言いようがない。

「政治的な権利とやらよりもさきに、生きる権利をあたえてほしいもんだね。食糧がないんだ。赤ん坊のミルクもない。軍隊がみんなもっていってしまった。自由や平等よりさきに、パンやミルクを約束してくれんかね」(283p)

帝国へ出兵する同盟軍は、独裁制に苦しむ民衆にとっては「解放軍」であらねばならない。だが民衆たちが望んでいるのは政治的な権利ではなく、明日を生きる糧なのだ。なるほど独裁制は民衆が望んだから生まれるものだという思想がここにも濃厚に表れている。選挙になると経済対策や生活防衛を掲げる政党が並び立つ我々の社会と、根源は同じなのだろう。

「進め!進め! 勝利の女神はお前らに下着をちらつかせているんだぞ!」(327p)

部下の士気を上げる帝国軍ビッテンフェルト中将の号令だ。これぞエンタメに登場する、イメージ通りの軍人。

「……おれは宇宙を手にいれることができると思うか?」(343p)

勝利を焦ったビッテンフェルトが敵に突っ込みすぎた結果、帝国にも少なからぬ損害が出てしまった。勝利を完全にはできなかったラインハルトがビッテンフェルトに罰を下すと宣告する。ラインハルトはまたしてもヤンにしてやられたことを相当悔しがっていることもあり、キルヒアイスがそれを諫めた場面での発言だ。覇道を進むラインハルトは、より大局的に物を考えねばならない。腹心の友・キルヒアイスの助言に触発され、ラインハルトが広い宇宙と己の野心を見つめる。

 

「銀河英雄伝説1黎明篇」の名言集(下)は以上です。
アニメも原作も、引き続き応援していきたいと思います。


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