鴎来堂「校正実践講座」参加レポート

校正・校閲プロダクションの鴎来堂が開催している「校正実践講座」に参加しました。参加しようか迷っている人、参加したいけど申し込みに間に合わなかった人などに向けて書きたいと思います。

私が参加した「校正実践講座」の概要

  • 講座は全6回(各回2時間)
    1、校正の心構え・組版入門
    2、照合の技術
    3、日本語表記ルールと漢字の字体
    4、素読みの技法
    5、事実確認
    6、差別・不快表現
  • 特定の回だけ受講することも可能
  • 午前に1講座、午後に1講座。昼休憩は2時間半
  • 料金は6回分一括で38000円
  • 場所は神楽坂駅から徒歩30秒の鴎来堂本社
  • 受講者数は1回あたり20人弱

申し込みについて

鴎来堂の「校正実践講座」の申し込みは激戦です。下記のツイートからも分かるように、即日満員になります。参加したい人は鴎来堂のTwitterをフォローしてこまめにチェックするのが一番確実だと思います。

申し込みフォームに必要事項を入力して送信すると、メールが届きます。メールに書かれている口座に受講料を振り込み、入金確認のメールが来たら申し込み完了です。事前に伝えておけば、講座当日に領収書も発行してもらえます。

講座の内容について

  • テキストに沿って講師が解説をしていくのが中心
  • 受講生が手を動かして実技をやることはほぼない
  • 自宅学習用の実技課題と模範解答も配布される
  • 各講座の最後には質疑応答の時間がある
  • 指名して答えさせられる場面はそんなに無いので、引っ込み思案でも安心

1、校正の心構え・組版入門

良かったなと感じたポイントは、プロダクションならではの実践的な話が聞けたこと。「作業計画はこんな風に立てると良い」「フリーランスでやるならここに注意」「過去にこんな問題が起きたことがあるので気を付けよう」といったことを教えてもらえます。私は会社員として校閲に携わっているので、独立したときのことをイメージできて良かったです。社内のローカルルールではない、校閲の作法などの話を聞けたのも良かったです。

少し手薄なのが組版の説明です。日本エディタースクールの校正講座などをイメージしていると、組版に関する説明はかなりあっさりしていて驚くかもしれません。私個人としては、細かい組版知識を延々と解説されるより、分かりやすくまとまっていて良かったと思います。ただ「組版からみっちり教えてほしい!」という人は物足りなさを感じるかもしれません。

2、照合の技術

このテーマだけで2時間も持つのかな?と当初は疑問でしたが、しっかり内容の詰まった回でした。
最近では手書き原稿とゲラを突き合わせることは減っているそうですが、「赤字照合」の作業は無くなりません。「赤字照合はとくに落としたくない」と講師の先生が言っていたのですが、なんでも「作家は修正指示を出したのに誤植が残る」というのは校正者の信頼を著しく低下させるから、だとか。なるほどなあと思います。そのほかにも、原稿に誤字、ゲラに正しい字が入っていた場合の指摘の仕方など、実践的なアドバイスが多くて役立ちそうです。
この回の一番の収穫は「デジタル時代でも照合をなめてはいけない」ことがひしひしと伝わってきた点です。

3、日本語表記ルールと漢字の字体

地味ですが、かなり大切な回だと思います。知識がなければ気づけない誤植、というのはたくさんあります。それを見逃すとやはり校正者としての信頼に傷がつくでしょう。この回は漢字関連の基本的なルールをコンパクトに教えてもらえるので、これまで敬遠してきた人でもきっと大丈夫。
現代仮名遣い、内閣告示の表記指針、字体の問題について分かりやすく教えてもらえます。「講座なんか受けなくても、こんなの本を読めば分かるじゃん」と思うかもしれません。ですがこの内容について本で勉強しようとすると、コンパクトかつ簡潔にまとまっているものが少ないんですよね……。とくに字体の歴史や内閣告示の指針なんかは分かりにくい。ここで骨格を押さえておけば、あとは応用が利きそうです。

4、素読みの技法

この回は一番人気で、すぐに席が埋まってしまうそうです。狙っている人は要注意。
素読みとはそもそもどんな作業なのか、という点から始まり、素読みのコツ、指摘の出し方、表記統一の考え方などを解説。とくに指摘の出し方は実践的で有用そうです。作家に敬意を払いつつ、修正をお願いしたい場合の書き方などは是非とも知っておきたいです。
あと、校正者が頭を悩ませがちな表記統一について。どこまで統一すべきか、効率的な指摘の書き方などを教えてもらえて、こちらも非常に役立ちそうです。

5、事実確認

近年、ますます高まるファクトチェックの重要性。昔はそんなに事実確認は行っていなかったようですが(活字時代は単純誤植が今よりずっと多かった)、今はファクトチェックの方を優先してほしい、というクライアントも多いようです。講座では事実確認の優先順位の付け方をメインに説明されていました。調べ方については少し触れる程度でした。原稿のジャンルによって調べ方、資料の使い方はさまざまですし。

6、差別・不快表現

これも近年、校閲に求められる重要な要素です。記憶にも新しい「新潮45」問題については触れられていませんでしたが、村上春樹「ドライブ・マイ・カー」についてはケーススタディとして取り上げられています。島崎藤村「破戒」における被差別部落問題も詳しく説明してもらえるので、非常に勉強になりました。
「差別語」の難しいところは、差別語であるから使われる頻度が減り、それがかつて差別的な言葉として使われていたことを知る人が減っていくという点。知らぬ間に使われていても、気づかないことがあるわけです。校閲者はそれに気づかなければいけません。しかも時代によって新たな差別表現が生まれることもあるので、この分野はずっと勉強し続けるしかないようです。

以上です。参考になれば幸いです。

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